永六輔師匠と その六


永さんとの思い出をすべて綴ろうと思ったら僕はおそらく死ぬまで書き続けなくてはならないと思う。そのくらい自分の話芸、いや人生そのものにインパクトを与え続けてくださった存在なのだ。そしてそんな不詳の弟子の舞台にもこまめに足繁く通ってくださった。4年前の三越劇場での公演の際も車いすで付き添いの方をお連れになってわざわざいらしてくださったのには涙がでた。そんな優しい師匠が一度僕の息子にまでわざわざハガキをくださったのだ。

6年前の鈴本演芸場での奥の細道の公演の際の事です。毎回、僕は奥の細道への導入を何とか現代と結びつけるべく様々な演出をしてきた。高校生の男女が学校帰りにカラオケに行こうとあるいていると、立ち止まり、フリーズ、その後二人は年老いた夫婦になって自分らの人生を振り返る。あるいは、現代の葬儀の場面から始まり、その友人の葬儀に集まった旧友達の間の会話から過去を顧みて人生を想ったり・・・そしてこの6年前の時は、父親が保育所に息子を迎えに来て、帰り道に遊びで子どもに覚えさせている奥の細道の導入部分を親子で暗唱しながら、旅って何だろう、東北ってどんなだろうと、東北新幹線の開通にちなんで親子で簡単な会話をするという設定だった。ここで当時4歳だった息子が奥の細道を舞台上で暗唱した。もちろんこの時の観客の驚きと拍手は凄かったのだが、公演の翌々日、永さんからわざわざ一通のハガキが届いたのにびっくりした。それがここに貼ったハガキである。永さんが自分の息子にわざわざおほめの言葉をくださったのだ。今ではこれは息子の宝物である。(もちろん自分にとってもだ!!)
ハガキもわざわざ子どもの為にお選びになっているところが凄い。こういう細かい気配りを一体師匠は何千人のいや何万人の人々にされてきたのだろうか。自分だけでも、どれだけ師匠からハガキを頂いたことだろうか。いつもたった一言、でもその一言がありがたいのだ。そして振り返ってこれだけの気配りを果たして自分はできるだろうか。いつも考えてしまう。

2016-07-29 01:33 | つれづれなるままに | コメント(2)

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