永六輔師匠と その七

永さんは本当によく本を書かれていらした。旅先で起こったこと、感じたことなどなどを小まめにご自分の分厚い手帳に書き綴り、それらを様々な新聞や週刊誌の連載に載せ、そして最終的にそれが一冊の本となる。私たちカンジヤマ・マイムも旅先でご一緒させていただいた事を何度も載せて頂いた。すると必ずご丁寧に本を送ってくださり、その本に一言書いてくださるのが常だった。まずはここでは最初に載せて頂いた本とその内容をご紹介する。今でもこの文はカンジヤマ・マイムのウェブにおいても永さんにご許可をいただいて推薦文としてその一部を使わせていただいている。以下、永六輔著、『逢えてよかった!:僕のメディア交遊録』(朝日新聞社)からの抜粋です。これは当時朝日新聞に連載されていらした『僕のメディア交遊録』というコラムから本になったものです。

「カンジヤマA・カンジヤマBさん [笑い]もとれるマイム

あらゆる筋肉を一瞬にして緊張させ、次の一瞬にはそれを弛緩させてしまう。
または、特定の筋肉だけを自分の意志通りに動かす。
こうしてパントマイムはその肉体表現を作品にするのである。
と簡単に書くことは出来るが、肉体表現だけで観客を笑わせたり、感動させたりするとなると、これは困難な事だ。

自己満足の作品が多くなるパントマイムの世界で、寄席の高座でも好評なのが「カンジヤマ・マイム」のコンビである。つまり、色物として芸人志向のマイムをつくっているのだ。
例えばマルセル・マルソーを芸人とは言わない。芸術家というが、芸人と芸術家は芸の差ではなく、意識の差である。

カンジヤマは、漫才、マジック、曲芸の世界に飛び込んで、芸人としての修行で、マイムを寄席の世界に定着させてきた。
一方で基本的なマイムを寄席の芸人に教えるようにもなり、相互に刺激を与えているのがよくわかる。
このカンジヤマのマイムのベースがヨガ。「このところ、困っています。ヨガというだけで、オウム真理教だと思われてしまうんです。真面目にヨガを学んでいる人たちにとって、こんな迷惑なことはありません。 正しくヨガを理解してくださればいいのですが、ヨガにしてもパントマイムにしても、この国ではまだなかなか・・・。
でも、なかなかだからこそ楽しいですね。寄席がマイムを受け入れてくださっただけでも画期的でした」

僕はこの二人が、寄席以前のステージで公演したパントマイム「奥の細道」に感動した。そこでは見事な芸術家だった。

2016-07-31 10:24 | つれづれなるままに | コメント

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