独裁者!

9歳になる息子が最近チャップリンにハマりだした!飛行機への憧れから歴史に興味を持ち、ヒトラーを知り、そしてやがてチャップリンの映画「独裁者」にたどり着いた。この映画「独裁者」では、その一連の笑いとギャグの中にヒトラーに対するチャップリンの怒りが込められており、それが最後の6分間の演説に集約される。そのシナリオは1938年に書かれ、翌1939年に制作、1940年に封切りされた。つまり、このチャップリン映画の凄さは、ヒトラーがドイツ総統に在任中にこの映画を作ったことである。当時のアメリカ映画界はドイツ系アメリカ人が多かった為、かなり制作過程で妨害があったと言われている。

息子は最初は子どもらしくふざけてヒトラーやチャップリンの髭を自分で作ってつけながら、彼の動作を真似して遊んでいたのだが、やがてこの映画の最後のチャップリン扮する床屋(ユダヤ人の床屋がたまたま独裁者ヒンケルに瓜二つで間違えられるという設定)が群衆を前に行う演説に興味を持つようになった。なんとなく見ていると、妹とふざけながらチャップリンの演説をでたらめ言葉(gibberish)で動作と共に真似し始めたのだ。

因みにこの最終場面のスピーチの内容が素晴らしい。独裁者を糾弾し、人類に共生の為の素晴らしい世界づくりに団結することを呼び掛けている。今まで早稲田や上智の国際教養学部で「マイムとパントマイムの歴史と理論」というクラスを教えてきたが、この映画をグループプロジェクト課せられた学生の多くが感動していた。

そこで、思い切って、「やってみるか?!」と息子を誘い、毎晩風呂でこのスピーチを暗誦してみることにした。まずはyoutubeで何度もこの演説を見せ、そして風呂で繰り返す。すると英語がまったくわからない彼は興味本位で真似しだし、見る見るうちに音をコピーし始めたのだ!!好きこそものの何とやらで、この長いスピーチをどんどん音で楽しみながらコピーして行けちゃうのだ!これにはびっくり。すらすら個々の単語の意味も分からず自分で繰り返している。まだカタカナ英語が入っていないのでかえって英語の発音がじかに入るような気がする。彼が一番好きなのが兵隊に向かって話しかけるところ(因みにYoutubeには字幕がついているので大体の意味はわかっているらしい)

” Don’t give yourselves to these unnatural men! Machine men, with machine minds and machine hearts! You are not machines! You are not cattle! You are men! You have the love of humanity in your hearts.You don’t hate, only the unloved hate. Only the unloved and the unnatural. Soldiers! Don’t fight for slavery, fight for liberty!”
「(兵隊たちに)彼ら(独裁者)のような異常な人間に君たちの身を委ねるな!彼らは人間ではない、機械のような心と頭をもった異常な奴らだ。君たちは機械ではない、家畜でもない、人間なんだ!心に愛をもっている。君たちは憎しみを持ってはいない。愛を知らないものだけが憎しみを抱くのだ。兵士たちよ、隷属への道を歩むことなく、自由の為に闘おう!」

これらをまさに楽しみながらコピーできる年齢なのだ。興味とは素晴らしい宝だ。その興味をどのように方向づけてやれるか。まさに教育演劇のチャレンジだと思う今日この頃だ。これらがいずれインドで実際に見聞きしたガンジーの非暴力運動の思想につながってくれればよいと願っている。

2015-03-14 06:15 | つれづれなるままに | コメント(2)

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