10月だ!!

いよいよ10月だ。今日から早稲田大学の授業が始まった。今学期からは西洋演劇史とアメリカ演劇のクラスを担当する。その初日、アメリカ現代演劇。いつも授業の最初に自分のPCの壁紙を学生達に見せて何の建物か、誰が建てたのかを問うことにしている。
正解、演劇博物館(エリザベス朝のフォーチュン座をモデルに建てられた)。坪内逍遥(早稲田の文学部の創立者、日本で最初のシェークスピア全戯曲単独翻訳者)。・・・・この答えがまったく早稲田の学生からでてこないのにはビックリする。そして少々悲しい気がする。もっとも時代が時代なのかもしれない。実は坪内逍遥先生の兄の息子であり、一時は逍遥先生の養子でもあった坪内士行氏はアメリカ演劇の開拓者の一人である、ハーバード大学のジョージ・ピアス・ベイカー博士(47ワークショップという劇作講座を開き、ユージン・ジオニールなどアメリカ現代演劇の中心的劇作家を育てている)に直接師事しておられるのだ。ちなみに、蛇足だが、このオニールの娘がなんとかのチャーリー・チャップリンの最後の奥さんであり(4人目)、その年齢差36歳であった。
帰り際、演劇博物館の逍遥先生の胸像にご挨拶しにゆくと、なんと今日10月1日から演博にて「演劇人 坪内逍遥」と題した展示会が開かれていた。(11月11日まで、入場無料)。ぜひこの機会に一人でも多くの人にこの偉大な演劇人の驚くべき広範囲にわたる演劇開拓の仕事を知ってほしい。 写真は演劇博物館の許可をいただいて展示会のパンフレットを載せさせていただきました。

2007-10-01 11:00 | 告知 | コメント

NTTふれあい演芸会にて

29日は栃木県の那須野が原ハーモニーホール・小ホールにて第12回NTT東日本ふれあい演芸会に出演した。
障害等を持つ方とその家族および付き添いをされる方を対象としたほのぼのとした演芸会だった。出演者は江戸家 小猫さんをはじめ、紙きりの林家 二楽さん、落語の柳家 喬太郎 師匠、そして大ベテラン漫才のあした 順子・ひろしさんと豪華な顔ぶれ!!東京の寄席とはまた一味ちがったファミリー的な雰囲気のある会であった。
この会は12回のうち既にカンジヤマの出演は三回目になる。前回はアメリカへの出国直前だったと記憶している。今回は帰国直後、早稲田大学の逍遥協会主催による、坪内ミキ子さんのトークショーのゲストに江戸家子猫さんが出演なさった事がご縁で、子猫さんに再会した。相変わらず本当にさわやかで素敵な芸人さんだなと思った。(などと生意気な事をいっているが、落語協会の大先輩でもある。)そしてその機会に、私が子猫さんより坪内ミキ子さんに紹介していただいたのだ。(ミキ子さんは坪内逍遥の養子であった、坪内士行氏の娘さんである)
帰り際に車椅子の方々が帰られるときに、順子さんの手を握り締めてよろこびの涙を浮かべていた方がいらっしゃった。こんなとき芸人って素敵な仕事だなとつくづく思う。人の心にうるおいを与えられる、そんな芸人はいつも輝いているのだ。自分もこの仕事が大好きだ。
写真は江戸家子猫さんと楽屋にて

2007-09-29 09:12 | 公演 | コメント(3)

マルソーの死

愛知の仕事の旅から帰宅すると、ほどなく共同通信社から電話が入り、マルセル・マルソーの死を告げられた。22日にパリで亡くなったようだ。享年84歳。
20世紀初頭、ジャック・コーポーによる、 ヴィユー・コロンビエ座付属の演劇学校にて自然主義によって死に絶えた身体表現を復活させるべく、身体訓練クラスを受け持ったジーン・ドーシー、そして彼の訓練法を発展させたエチエンヌ・デクルー。デクルーの身体訓練法「マイム・コーポレアル」はストイックなまでの身体の部分部分の動きの文法化を成し遂げた。しかし、それが一般大衆に必ずしも受け入れられはしなかったのも現実だ。そのマイム・コーポレアルにチャップリンなどのペーソス、キャラクターワークを応用する事によって「マイム」を一般大衆に普及させたのがデクルーの愛弟子である、マルセル・マルソーだった。かれの世界巡業によってアメリカを始め、日本でも舞台、テレビを介して一般のお茶の間に白塗りのマイムが登場するようになった。一時はマイム=マルソーと言われるほどそのキャラクターが強烈にマイムと同化するほどになる。(詳しくはカンジヤママイム訳書「パントマイムのすべて」および「おしゃべりなパントマイム」を参照ください)
最後に見た舞台はたしか2年ほど前、アメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大学の劇場だったと記憶している。私自身の師匠、モンタナロ氏もそうであるが、直前まで舞台にたっているという事自体がすごいことであると思う。私の人生をマイムの道に導いてくれたのもマルソー氏であった。今は心からの感謝とともにご冥福をいのるばかりである。

2007-09-23 09:01 | 告知 | コメント(2)