夢ってなんだろう

 

11月月末より12月初めまで、福岡~熊本~佐賀を回るワークショップの旅をした。初日、福岡県築上郡上毛町という福岡県の東北端の町を訪れるため、大分県中津で宿泊し、「九州着」とフェイスブックにて呟くと、当地で現在英語の先生をしている早稲田の教え子のmarkがすぐにメッセージをくれ、翌朝ホテルで久しぶりに会う事に。彼はカルフォルニア大学より早稲田に来て、卒業後、中津の中学校で英語教師として頑張っている、日本が大好きな陽気なアメリカ人。仕事前、久しぶりに再会し、楽しい話に花を咲かせた(写真上)。

マークがここに赴任直後驚いたことをいくつか話してくれた。そのいくつか。「日本の子どもはすぐに人の年齢をききたがる」。お母さんたちは年齢をいうと、(彼はまだ二十代中盤なのに)「結婚はまだなのか?どうして結婚しないのか」と必ず尋ねてくる。そして(本人はアジア系の顔をしているので)子供達に「なぜ、日本人じゃないの?どうしてアメリカ人なの?」と聞かれるらしい(笑)。大笑いしながらもちょっと気になる話題だった。

言われてみれば、確かに日本の子どもたちはよく人の年齢を聞きたがる。いや、実際執拗に何度も人の年齢をきいてくる。公演終了後、すぐに質疑応答の時間で聞かれるのが「何歳ですか?」なぜ日本人はこんなに年齢ばかり気にするのだろうか?勿論社会や親の影響が大であることもあるのだろう。どうして結婚しないの?も同様だ。ある一つのモデル的な生き方が常に付きまとっているのかもしれない。常にそのモデルを意識しながらこの人はどのあたりを生きている人なのかを聞くのかもしれない。そしてこの規範を逸する事はあまり好ましくはない。なぜならば生きづらくなるからだ。

アメリカに長く暮らしてきて日本に帰国すると気になるのがこの国の年齢差別だ。ある年齢になると極端に様々な可能性を否定される。就職の募集にしても、政府奨学金にしてもしかり、すべてはこの「モデルの生き方の範囲内」で納められる。こんなこと、万が一アメリカであったら年齢差別だと訴えられること間違いなしだ。なぜある年齢になると、ある一定の社会的なステータスやら、その他の行動を規定されるのだろうか。この標準を逸脱すると枠から外れてしまう。とても不思議だ。

自分の場合も、人生に徹底的に迷った時点で、それも当時不惑の年齢に達していた自分にチャンスをくれたのは日本ではなく、アメリカだった。それまでの自分のマイムのキャリアに対し、大学は授業料の完全免除と月々の無条件の奨学金(それも生活には十分すぎるくらい)を異国の、しかも(日本では)常軌を逸した人間にポンと与えてくれた。ひるがえって日本で自分のマイムのキャリアを認めてくれる組織は皆無だった。つまり常軌を逸した生き方にエールを与え、今の自分を育ててくれたのはアメリカの州税なのだ。(もちろんいろんな方法でこのご恩を返しているつもりだが)

もう一つ、この年齢意識と共に最近気になるのが、子どもたちがマイムの公演をみて私たちに頻繁に聞いてくる質問だ。「ねえ、本当の仕事はなにしているの?」「パントマイムって儲かるの?」・・・かなり現実的なクールな見方をする子どもたちが多い。これは悲しい事でもある。なぜならば自分が子どもの頃、果たしてこの仕事で食っていけるか、マイムを始めた時、果たしてこの仕事で生活できるか?など微塵も考えはしなかった。ただ単にこの芸術に惚れ込んで、ただひたすらこれをやりたかった。そしてこんな凄い芸ができる大人にただなりたかったのだ。小さい頃から「いくら儲かるか」「これで食べられるのか」など考えた事もなかったのだが、最近の子どもはどうも「儲かるのかどうか」が非常に気になるらしい。

凄い事を見たり聞いたりしたら、まずはそれをやってみたい、ひたすら食いついていきたいと思うのが夢なのだと思うのだが、最近日本の子どもたちにはこの「夢」や「憧れを」生きる余裕がない、あるいは憧れに生きるという事自体知らないように思われて仕方ない。言い換えれば、「憧れを生きてもよいのだ」「夢を追ってもいいのだ」と思えるような社会ではないように思われる。すべては「どのくらい金を稼げるのか」という大人の価値観に集約され、マスコミでも情報が流されてしまっているのではないか。だとしたら本当にこれは悲劇だ。社会全体が金満主義に満ち溢れすべてはお金で判断されている昨今、未来をしょって立つ子どもたちもその金満主義の洗礼を早くから受けてしまってはいないか。旅の最中こんなことを考えていた。

(写真下は阿蘇にて。風向きが逆だったため、噴煙や降灰は見られなかったが、とにかく寒かった!!!ぶるぶる震えながら写真を撮っていると近くのガソリンスタンドの叔母さんが大笑いしていた)

2014-12-07 06:23 | つれづれなるままに | コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。