盆の季節になると世の中の機能が一時麻痺し、停止したように思われて少しほっとする。もっとも既に高速道路の帰省ラッシュなど、慌ただしさの側面も伝わっては来るが・・・ この時期に必ず読みたくなるのが仏教書。昔からインド仏教史にやたらに興味があり、何十冊も読んできた。今年も二三冊もって実家の松戸に帰る予定。迎え火、送り日の間のつかの間にお盆という意味を今一度考えるひと時。
ただし、今年の故郷の風景は今までとかなり違う。なんと実家の松戸は現在ホットスポット。先日の市民グループ『放射能防御プロジェクト』による測定でも松戸はかなりの線量を記録してしまった。楽しみにしていた息子との江戸川土手での段ボール滑り降りもできない。故郷の景色が一変してしまった。まさに世の中の常ならざる法則を感じる。そしてこの世の理不尽さもしかりだ。正義は必ずしもない。というより正義は常に金の力、権力によって踏みにじられている。そんな状況の中で息子にどんな事を教えたらよいのか。
昔仏蹟をたずねインドを数か月さまよい歩いた時に、やはり同じ無常感に浸ったのを思い出す。ブッダの誕生の地、ルンビニー、正覚の地ブッダガヤ、初転法輪のサルナート、入滅の地クシナガラ、そして雨安吾の地ラージャガハの霊鷲山(りょうじゅせん)や竹林精舎、そしてシュラーヴァスティーの祇園精舎。すべて荒れ果てていた。あれほど一時勢いのあった仏教の聖地が無残な姿になって保存されていた。仏滅後にそのブッダの教えを巡り、多くの論争がされ、そして戒律も頻繁に解釈の変更がされた。部派に分かれながら、そしてそれぞれの教えを確立して分かれて行った仏教。その東方の果ての成り行きが、日本仏教。その軌跡を辿り、その過程の中での人々の悩み、苦しみを知ると本当に深い意味合いが味わえる。自分をまずは救うのか、自分を差し置いても他人を救うのか。いや、自分を救えずに他人を救えるのか。こんな人間の根本の葛藤が仏教史ににじみ出てくるのだ。迎え火、そして送り火、このプロセスの中で果たして自分は自分の息子に何をしめせるのか。
昨日友人からのメールにあった。五山の送り火に使用する陸前高田の松の薪に関する話題に関して彼は、「京都って日本一神社仏閣等が多い街じゃない?今まで京都の宗教者が被災者救援の先導をしたっていう報道を聞いた事がない。」と。実に率直でフランクな疑問だ。そして同時にこれは北伝仏教の東の果ての仏教のなれの果てである葬式屋さん、あるいは観光寺経営者という現状をよく表している。息子にはこの機会に是非仏教に触れてほしい。ただし、本物のブッダの教えに。そのためにもこの季節を大切に一緒に過ごしたい。
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