マイム?パントマイム?

昨日nyankomeshiさんよりマイムとパントマイムが違うという事を初めてお知りになられたというコメントいただきましたが、一般的に現在ではパントマイムとマイムとが混同されて同義語のように扱われているのは事実です。ですが、歴史的にみるとそれらはかなり違うスタイルものだったようです。
マイムとは紀元前6世紀くらいまでさかのぼってドリアン地方でおこなわれていたドリアンマイムというのが一番古くまでさかのぼれるマイムの原型ですが、その頃はマイムとは雑多な芸の総称のようなものでした。つまりアクロバットとか綱渡りとか歌手、あるいは台詞役者といった雑芸を総称してマイムとひとまとまりに呼んだらしいのです。もともとこのマイム、mime とはmimosという言葉からきており、その意味はmimesthaiという動詞の動作主名詞(agent noun,つまりその動作をする主体)でした。そしてこのmimesthai という動詞がまた面白い起源をもっていて、なんと初期においては声帯模写をすることを意味していたというのです。つまりマイムの原型は形態模写ではなく、声帯模写だったのかもしれません。自然の音や動物の鳴き声を模倣する芸であった可能性もあるのです。やがてこれが形態模写を意味するようになり、その行為を行う者をmimosとよびました。あるいはその行為自体もmimosとよばれました。真似をする、模倣をするという意味あいにおいては一般的な役者を指す言葉であったともいわれます。つまり決定的にパントマイムと違うのはその芸はかなり雑多であり、大いに音や声を使った芸であったという事です。
そういった意味合いにおいては日本の平安時代前後に中国あたりから伝えられた散楽とも似ていると思います。この散楽も様々な雑多な芸が寄り集まったものだという事です。やがてこの散楽が猿楽となり、そして田楽などと融合することによって現在の能楽の原型ができたといわれています。
一方パントマイムはマイムよりかなりおくれてローマ時代にその原型が認められます。パントマイムとは沈黙の語りをおこなうダンスのようなものだったようです。特徴としては一切喋らずに一人の役者がマスクを使い分けることによって幾多の役割を演じ、ある物語を語るという芸でした。このマスクが一切口の部分に空きがないこともその沈黙の芸という裏付けになりますね。一説によるとローマ時代紀元前22年ごろにピラーデスとバティーラスによってローマに伝えられたそうで、ピラーデスは悲劇を演ずることに長け、そしてパティーラスは偉大な喜劇役者だったという事です(詳しくはクロードキプニス著、カンジヤマ・マイム訳『パントマイムのすべて』晩成書房刊の補章をご覧ください)。
このサイレント劇のパントマイムと雑多な喜劇マイムが初めて芸術として融合されたのが、1818年ごろフランスの場末の劇場街、通称犯罪通りのフュナンブル座におけるジョン・バティスト・デビュローという役者による白塗りのピエロでした。そうです、映画「天井桟敷の人々」でジャン・ルイ・バローが演じたあのバチストです。この芸の大ブレークが同時にピエロというキャラクターのブレイクを引き起こし、パリ中にピエロのブームが起こり、シャルルノディエなどのロマン派の仲間たちのサポートを得、ロマンティックなピエロの物語が言説として展開します。このピエロについては次回あたりにまた面白いエピソードを!!

2010-05-02 09:12 | つれづれなるままに | コメント(4)

マイム?パントマイム? への4件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。