連日の強行舞台スケジュールの翌日大学で教え、その帰りにジムによってトレーニングしたらさすがにその夜は何もできずに布団の上で意識を失ってしまった。
今回の旅でつくづく感じたことがある。子どもや青少年の感性と言う問題だ。自分は一つ一つの舞台にいろいろな思いをこめて、お客さん達との出会いに何かを必ず残したいと思いながら演じている。だからオモシロおかしい作品群の最後には必ず大人向けの一見難しいマイムを一つでも二つでもあえて演じたいと思っている。
ただその場合にいつもそれを見ている大人の方々から同じようなリアクションがある。「私たちには分かるが、少々子どもには難しかったのでは?」というもの。つまりそれを見ている大人の方が不安になることがあるようだ。これはとてもよい機会なのでそのつどそういった方々に御話しさせていただくのだが、観劇という行為はそれを理屈で分かればよいというものではないのだと思う。たとえ理詰めで分からなくても、そこで行われた行為がどのような「感じ」のものであったか、あるいはそれを見ている周りがどんな反応をしめしていたのかを感じることは、その感性が育ってゆく上の大切な過程であると思う。
実際子供達のなかには本当に個人差があることに驚かされる。先日福井の大野市の小学校でも最後に「バイオリン弾き」という人間の死を扱った作品をあえてぶつけてみた。最後の場面で笑いの面をつけたバイオリン弾きがベッドに横たわる息子の死に気づき、笑いの面をかぶったままその子を抱きしめてその体の反応のみで、父親のショック、苦悩にうめく感情を表出するのだが、その瞬間、小学生の反応は二つに分かれたのをはっきり舞台から感じたのだ。ゲラゲラと笑っている子ども、そのなかで何人かが「あっ、死んだ!」「死んだんだ」と控えめな小さな声があちらこちらから聞こえてきたのだ。
このようないろいろな反応を誘発するということだけでも本当にこの経験は有意義だったと思う。観劇に間違いなどはないと思う。本人がそれがおかしければ、それはおかしいのだからそれでいい。そしてその反面、なぜ隣の仲間が違う反応をしめしたのかをどこかで覚えていてもらえればそれもまた一つの経験なのだ。いや、そうでなくても、ただ単にわからないというだけでもいい、そうしたら他の友人、あるいは大人に聞く子達もいるかもしれない。このプロセスでいろいろな学びが起こってくるのだと思う。
思うに学校と言う場はあまりにも「間違えること」、そして「分からない」という事が否定的に捕らえられているところだと思う。間違うこと、わからないこと、イコールそれが敗北のごとく常に扱われているのが現状だろう。が、しかし、人間に間違えがなかったら、そして分からないという自らの疑問がなければ何も発展はしなかったはずだ。あえて人から与えられたものを正しく繰り返すだけの人間を学校教育(特に日本の場合)はつくりすぎたように思う。特に感性というものは、自分にとっては背伸びしたようなものをどんどん見たり聞いたりしてゆくことにより、より高度な精神性を開拓できるのだと思う。
自分自身の経験からしても、子どものときに何気なく見ていた大人の為のテレビや映画のシーンをなぜかたくさん覚えている。頭に残っているその残像を成長の過程でどのくらい繰り返し思い出しては「ああ、そうだったのか!!!そういうことだったんだ”!」と再確認させられたことか。つまり、成長の過程でより高度な事柄を見聞し、経験し理解したことが、過去にわからなかった蓄積された経験と照合されてより納得のゆく再確認がされるのだろう。その時にその人間に過去の分からなかった経験がどのくらいたくさん蓄積されているかということが、より深い、経験による理解への鍵となるのだと思う。「ああ、そうなんだ、そういうことだったんだ!!」子ども達の将来のこの瞬間のためにも、これからもどんどん彼らの感性に訴えるマイムを作ってゆきたいと思っている。 (写真は大野町上庄小学校のみなさんと)
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