鈴本演芸場初席、四日目が終わった。相変わらずの満員立ち見のお客様でにぎわっている。正月から程良い身体のウォーミングアップをさせて頂いている。寄席が初めてのお客様が多い初席は日によって盛り上がり方も様々で面白い。そして寄席に通う前後の電車での読書がまた楽しい。
実は、昨年暮れから今年にかけて、仕事の合間に妻の学生の英文校正を手伝っている。来る日も来る日も大学生の英文を校正しながら誤りを指摘し、アドバイスを書きこむ日々。つくづく感じる事は、そもそも英語力の前に母国語での思考の論理性の無さだ。(だから小学校英語は無駄なのだ!!)。これは何も彼らに限った事ではない。最近何冊かの日本の大学危機説を唱える新書を読み漁っているのだが、読むたびに大きくうなづいてしまうのが、多くの大学生の基礎学力の低下なのだ。日本語でさえ論理的な文章が書けない学生が多いのに驚かされる。聞くところによると算数さえもできずに入学してくる学生も多々いるとか。AO入試という便宜によって、まったく学力を問われずに入ってくる若者の多い事。これは大学の経営上の事情優先の結果であり、そもそも少子化という日本社会の中で、大学の数が多すぎるという事が大きな原因となっているのは明らかだ。今は国内の大学の4割強が定員割れしていると聞く。この少子化の中、節操無く学力も問わずに入学させようとする大学が続出する。それは当然であり、この大学の数自体が異常なのだと思う。
いわゆるメガバンクと呼ばれる都市銀行が離合集散の連続の結果、多くの銀行が現在の数になったと同様に、大学も今後どんどん淘汰されねばならないと思う。事に最近では現役の学生から相談を受ける機会がしきりに多くなっている。一番多いのが海外からの帰国組(いわゆる帰国子女であり、海外の大学の内容を知っている学生)が訴える日本の学生のやる気の無さだ。まったくクラスに刺激が感じられないという不満がおおいのだ。そんな彼らにはアメリカ行きを素直に進める事がある。日本ではアメリカのような気迫が感じられない。授業でも、しきりにこちらからディスカッションをしかけて、考えるように仕向けようとするのだが、アメリカの学生と比べると本当に無反応なのだ。(つまり議論するような基礎学力がないのも大きな原因なのだが)。ちょっと前、ハーバードのサンデル教授の人気の授業がテレビ等で流行ったのだが、あの形式を日本で持続させるのは本当に難しい。勉強をしたくないものは大学に来る必要がないのに、いわゆるブランド志向で大卒という肩書のみを求めて高い授業料を親に払わせてくるのが日本の大学生だ。
面白い事に、最近の新聞ウェブ版で企業側が、学生の出身大学名より高校名に注目するという傾向があるという事が報告されていた。その記事にいわく「高校名重視の背景には、大学全入時代と言われ、私学への入学者の約半分が推薦・AO(アドミッションオフィス)入試という現在、学生の能力・資質への不安があります。なお、大学に関してもどうやって入ったのかを確認する企業も増えているとか。・・・ 推薦・AO入試が悪だとは言えないのですが、やはり基礎学力に対する不安と、競争やそれによるストレスを経験していないことを気にするわけです。さらには、中学受験をしたかどうかを確認する企業もあります。」という。http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20111231/dms1112310958001-n1.htm
一体大学の存在価値とは何なのだろうか。改めて考えてしまう。例えば一昔の大学ならば現在のような日本が抱える大きな諸問題を真剣に論じていた学生が多かった。原発にまつわる放射能問題、日本のマスコミの堕落、国債破綻問題、官僚支配、情けないくらい無能な外交の諸問題などなど多くの学生はまったく意識にない。つまり大学の中は社会とは隔離されて守られたモラトリアム的な世界なのだ。(学生に対して社会人という対比があるのも、これを端的に表しているような気がする)
さてさてこの寄席が終わるころには、最終授業と期末、採点の闘いが始まる。
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