メディアリテラシーの実践

昨今のマスコミによるインフルエンザ報道に影響されてか、年内に予定されている学校などの芸術鑑賞公演のキャンセル、あるいは延期などの問い合わせが随分と多くなっている。しかし、ここで一つ疑問なのは本当の実態の把握がどのくらいされているのかという事。
何歳の児童が新型インフルエンザで亡くなったとかを連日のように、それこそ鬼の首とったかのようにマスコミは報道のネタにするが、実は従来の毎年の季節性のインフルエンザでも多いときには1万人以上の死亡者数を出しているのが実情だという。そして今回の新型インフルエンザはこれまでのところ弱毒性のものであって、人類にとり免疫がないゆえに広範囲に広がる懸念はあるものの、致死率は大きくないという。つまり感染しても敏速に適切な処置をすれば大丈夫なのである。問題は感染後の処置なのだ。特にメキシコなどで初期に見られた死亡は二次感染によるもの(つまり初期感染で体力が低下しているときに、他の感染による死亡)だという。 こういう実態をマスコミはちゃんと知らせる義務がある。もちろん記事は過激なほうが売れるだろうし、見ごたえがある。しかし、実態を誇張したり実態の一部のみを強調するのはやめていただきたい。
教育者の皆さん方にはもちろん学生、生徒さん達に対する責任は理解できますが、むやみやたらにマスコミの情報に恐怖心を煽られている傾向もないではないような気がするのです。特に初期の桝添前大臣のあまりにも過剰な反応もそれを助長したのかもしれない。今必要なのは冷静な実態究明(インフルエンザの本質とその感染後の対処法)と状況分析であって、マスコミに煽られることではない。これが本当の意味での「メディアリテラシー教育」だと思う。
マスコミのニュースからその本質を読み解く力は、今大人が自ら子供たちにその行動で示してゆかねばならない重要な課題だ。特に教育者の皆さんがこれを身をもって示してほしいと思う。子供は確実に大人の後ろ姿をみて、それを学んでいる。マスコミの情報に右往左往しながら、芸術鑑賞などの大切な事をいともたやすく犠牲にするような態度は、それを黙ってみている子供たちに少なからず「教育」をしているのだという自覚をもっていただきたい。芸術は付属品や補足品ではない。これこそ今の若者、子供たちに今重要な心の栄養なのだ。芸術を軽視する態度は日本では明治維新以後ずっと大人の態度がその子供たちを教育し、こういった価値観を代々再生産してきたのが事実だ。
メディアリテラシー。本当に重要な課題です。そして芸術を鑑賞する機会の本当の意義を考えていただきたい。今年の判断によって芸術との出会いの機会を失う子供たちもいるのだということを念頭に、冷静な、あくまで冷静な判断をしていただきたいと切に思うこのごろです。

2009-10-15 06:35 | ひとりごと | コメント(4)

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