今夜は早稲田の授業が終わってから今週末に行われる東大でのワークショップの打ち合わせに赤門でスタッフの学生さんと待ち合わせをした。・・・ところが、ところがである、うっかり天気予報を聞かずに家を出たから赤門に到着した瞬間に雷を伴うものすごい土砂降りに遭遇した。その雨が待てども待てども上がる兆候がまったくない(涙) やむなく、その学生さんと打ち合わせ場所の教室まで大雨の中をずぶぬれになりながら歩くことになった。お借りした傘などまったく通用しないような大粒の激しい雨の中、文字通り怒涛の如く狂い流れる路肩の押し水に新しい靴がぐっちょり浸り、ズボンはひざ上までビショビショになった。人間の記憶というものは不思議で、そんな雨の中を歩いているうちに、その昔インドのヨーガの大学で修行に励んでいた頃の記憶が鮮明に蘇ってきた。
ちょうど30になったころ、ボンベイ(今のムンバイ)の北に位置するロナワラという場所にある、ヨーガ教師育成プログラムに参加したのだ。そしてこの数カ月の間に生まれて初めてのインドの本格的なモンスーン到来を体験した。何日も降り続く大雨の後、ある朝起きてヨーガの教室に行こうと外へでると、そこは文字通り胸まで水位があがった洪水の世界だったのだ!床下とか床上とかいったレベルではない!そのまま胸上浸水なのだ(苦笑)その胸までの水の中をみな歩いて、というか、ちょうど水中フィットネス歩行をしているがごとくの状態でクラスに向かったのだった。これは冗談ではなく、ふとその時遠くをみると、な、なんとコブラのような大きな蛇も一緒になって泳いでいた!!・・・
話がそれたついでだが、ちなみに、この時、つくづく思ったのだが、やはり言葉に付随する印象、あるいは意味とは文化により、言語により本当に大きな「ずれ」が生じるものだということだった。日本でいう梅雨とは詩情を誘う、いたって穏やかな湿気である。例えばその昔、和辻哲郎は日本の風土の特徴を「湿気」に起因するものとし、その季節の変わり目の抒情的感情、あるいはものの輪郭をぼかすという特徴を誘導するものとして位置付けている。だから、この感覚で仏典などを読むと、雨安吾という梅雨時期に釈迦をはじめとした僧たちが遊行をさけ、一定場所ーたとえば祇園精舎などーに定住する習慣が、さも穏やかな雨の中のくつろぎのひと時のような印象を受ける。しかし、実際にインドのモンスーンを経験すると、雨安吾とは、他に選択肢のない、それはそれは非情な土砂降り、洪水の中のやむを得ない選択だったのだと気づかされるのだ。
話題が大きくそれてしまったが、数十分の土砂降りの中によみがえった肌の記憶だった。打ち合わせで東大の中原教授といろいろな話をさせていただいたが、大いに示唆に富むお言葉をいただいた。やはりマイムの可能性をもっと社会に知ってもらわないとならないとつくづく感じた。今こそ企業の教育にも活用できるのがこの身体訓練のシステムではないのか。本当に違う分野のエキスパートと話をさせていただくのは刺激的だ。話しているうちにどんどん新しい刺激を受けて、面白いアイディアが浮かんでくるのだった。まだまだやらねばならないことがたくさんありそうだ。今度のワークショップが楽しみだ。
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