新鮮でほっとした「メリークリスマス!!」の文字

今日は目黒区の八雲学園という女子校での芸術鑑賞会の舞台だった。早朝5時半、まだ暗い中、家をでて、7時より仕込み。朝7時前に校舎前に車をつけると校舎の壁面一杯に”Merry Christmas!” というおおきな幕の文字が目に入った。このところアメリカでは公的な学校などではめっきり見られなくなってしまった表現である(もちろんミッション系の私立学校は除いて)。
なぜ?と思われる方もいらっしゃると思うが、簡単に言えば、多文化主義の流れにより、他民族、他宗教、他文化への配慮という大義名分(いわゆるPC=ポリティカルコレクトネスともいう)でもって言葉の表現に過敏になっているのであります。つまりメーリークリスマス!!とはあくまでキリスト教のお祭りであり、他宗教の人間にとってはメリークリスマスではないとの論理なのです。では、アメリカでは公衆でのこの時期の挨拶はどのようにされているのか?といえば”Happy Holidays!”と最近では皆言うようになっています。大統領も、知事さんも、そして校長先生からコミュニティーの皆さんまで、すべてハッピーホリデーズ!!ちょうどこの時期は他宗教の多くも様々な儀式やらお祭りがあり、それを総括して当たり障りのない表現にしたものがこれなのです。
ちなみに自分の以前住んでいたニューヨークではユダヤ人口が多く、彼らはこの時期ユダヤ暦Kislev月の25日から8日間行われるユダヤ教徒の祭り「ハヌカ」というものを行います。これはシリア王とのマカベア戦争(紀元前168~141年)に勝利し、汚されたエレサレム神殿を清めて再び神に奉納したことを記念するお祭りであります。
もっともこの言い換えの流れを如実に肌で感じたのは自分がまだアメリカにいた2003~4年くらいだっただろうか。たとえばクリスマスツリーなども「コミュニティーツリー」だとかいう表現で言い換えられたりしていた。そして学校ではクリスマスソングも歌われなくなったのです。去年あたりも確かワシントンの空港でクリスマスツリーのイルミネーションを相手取り、一部のユダヤ人が訴えるぞとおどかしたもので空港は保身の為に即、全てのツリーイルミネーションを取り払ってしまったという悲しいニュースを聞いたのを覚えています。もっともこれに対してあるクリスチャンのグループはメリークリスマスといわずにハッピーホリデーズと言い換えて広告を出している店での不買運動などをおこしたりとその反応も様々なようです。
ただ、今朝そんな厳しいアメリカでの状況をよそに、学校全体が一緒に「メリークリスマス!!」とさわやかに祝っているのがとても新鮮でホットさせる晴れやかさというか、ある種の安らぎを覚えたのです。思えば日本人の宗教感とは不思議で、曖昧さの中にも、その懐の深さがあり、そして皆でいろいろ祝おうという素敵なコミュニティースピリットがあるのだと思う。同時通訳の神様、國弘正雄先生が以前面白い表現をされていたのを思い出す。それは西洋の宗教感とはmuturally exclusive (つまり他者を常に排他するもの)であり、日本のそれは muturally permeative (つまりお互いを受容しつつ認め合うもの)だと見事に表現されていらっしゃった。考えてみれば所詮クリスマス自体、ローマ帝国の初期まであった異教徒達が行っていたお祭りやら儀式を踏襲しながら変形させていったものに過ぎない。聖書のどこにもイエスが25日に生まれたなんて書かれていないのだ。それを青筋たてながら、口角泡を飛ばして争う意義がどこにあるというのだろうか?
とにかく今日の学校は本当に一言でいうと「品がある」しかし、「飾らないさわやかさ」が感じられた学校だった。最初から客席の盛り上がりは凄かったし、しかもそれでいて悪乗りはしない、とても理想的な、洗練された生徒さんだったというのが正直な感想だ。やはり毎月様々な課外行事を経験している効果なのだろうか。 (写真は二歳の息子が知らない間にクリスマスツリーに掛けたソフトクリームのおもちゃ。既に見事な主張がある!!笑)

2007-12-18 10:59 | 公演 | コメント

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