立教大学、松ゼミにて

昨年に続き、立教大学の松ゼミこと松平教授の教育学部のゼミにマイムの講師としてご招待いただいた。約20人の教育学部の学生さんと立教OBの現役の小学校の先生方を対象とした本当に意欲満々の若者が集うゼミだ。カンジヤマが公演活動と同時に目指している日本の教育界へのマイム的発想、マイム的訓練法の応用を最前線で実践してくださるかもしれない若者達にワークショップできる事は本当に有意義なことだ。
実は去年まだ博士論文を執筆していた最中での渡米直前のこのゼミへの参加が思いもかけない偶然の発見を生んだのです。それはそのゼミで皆さんと一緒に歌ったラベンダーブルー(lavender’s blue)という曲でした。この歌がとても耳に残っていたので是非、より深い意味を調べてみようと、マザーグースの本をニ三冊借りてアメリカへ論文執筆の旅にでました。ところが博士論文のテーマである、坪内逍遥の児童劇の詳しい軌跡をたどってゆくと、なんと彼が当時もっとも頻繁に舞台に乗せた劇が坪内が自ら訳した「メレー婆さんとその飼い犬ポチ」と言う劇で、その原本がマザーグースのハバードおばさんと犬 (Old mother Hubbard)という歌だったのだ。その原本と坪内の実際の台本を比較してゆくうちに、彼の大きな誤算が露呈してきたのだった。つまり英語ではマザーグースの歌はその韻(rhyme)が命であり、それなしでは単にナンセンスな物語になってしまうものが多いのだが、坪内はなんとその韻をすべて無視して上記のOld Mother Hubbardを筋書きだけ訳して児童劇にしてしまったのでした。つまり英語でNo rhyme, no reason,といわれるように全く意味の分からない小物語になっているのです。観客の反応はやはりそれでも坪内逍遥が主催した児童劇ということで、すばらしいという意見も多かったのですが、その反面、あまりにも芸術的という??感想も多かったのです。つまり韻を無視したマザーグースをそのまま児童に演じさせたこの物語はおばあさんがいろいろ買い物して帰ってきたときに、本来ならばその買い物の内容と犬の不可思議な行動(例えばパイプをくゆらせているとか)が韻を踏むから面白いものが、まったく韻もなにもないシュールな??無関係な、ナンセンス物語として観客の目にうつった可能性が高いのです。この他翻訳の技法的に英文の文章的な訳であったりとかなり細かく分析できたのはこのマザーグースの本との出合いが決定的なキッカケとなったのでした。
まあ、長い話をなるべく短くすると、このような細かい分析をかなり幅広く出来たおかげで私の論文は演劇学部から優秀論文(predicate of distinction)の誉れを頂くことができたのでした!!なにがキッカケになるかわかりませんね。今では立教の松ゼミへのご縁に感謝、感謝なのです。(イラストは坪内逍遥著、家庭用児童劇より、メレー婆さんとその飼い犬ポチ)

2007-07-22 11:14 | つれづれなるままに | コメント

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