産経新聞 1996年1月6日 生活欄より

《パントマイムの領域を広げ、独特の世界を作り出している名コンビ。群馬県南牧村にあるマイム道場のほか、マイム体操、童謡マイム、俳句マイムなど、身近なテーマをパントマイムで掘り下げる》

 

※ユニークな名前ですね。

 

カンジヤマB「師匠のトニー・モンタナロ(アメリカ人)につけてもらいました。日本の漢字を知っていて、カンジ(感じること)がヤマ(山)のようにたくさんになるということです」

 

※コンビ結成は一九八五年、米・メーン州で。

 

カンジヤマA 「その年の十二月、日本へ戻ってから二人で何をしようか、どんなマイムをやっていけばいいかと迷いました。いろんなジャンルの人の芸を見て回り、知人の紹介で南牧村に行って廃屋になっていた農家を借りることもできました。当時は仕事もないし、一年の半分くらいはあちらに住んでました」

 

※今ではとても忙しい。

 

B 「おかげさまで、昨年の後半はほとんど休みなし、ステージの数も百二十以上だったと思います。南牧村にも八月以来、帰っていません。本業のほかに、桐朋学園短大の講師、今年は東京女子体育大学でもマイムを教えることになっています」

 

※こどもにもパントマイムを見せていますね。

 

B 「全国の小学校、中学 校で『マイム劇場』をやっ ています。主な内容は『マイム体操』と『童謡マイ ム』。童謡マイムは『こん なとき、こんな曲が聞こえ てきたら怖い』という音楽マイム。たとえば、ぼくがフランス料理店の客になりエスカルゴを注文。彼女がウエートレスで料理を運んでくる。(食ペていると)『でんでん虫虫……』と聞こえてきて、かたつむりのマイムをして引きあげていく。ほかには、車を運転しているシチュエーションで、『猫踏んじゃった』とか」

 

※彼らの反応は。

 

A 「そりゃあ喜んでくれますよ。でも、親の態度が影響します。一緒に見ていて、親が自分で楽しもうとしないとダメなんです。親がゲラゲラ笑っていると、こどもの方もそんなにおもしろいものかと思うみたい。親が心配ながら見てい ると、こどもからもストレートな反応が返ってきません」

 

※パントマイムの入門書も出版されました。

 

B 「一昨年二月に大月書店から、『おしゃべりなパ ントマイム』という本を出しました。現在までに一万四千冊ほど売れているようです。今はこども向けのマイムの本を執筆中。次は『パントマイムで英会話』という企画も考えています」

 

※俳句マイムの方は。

 

A 「山梨県中富町に『句 碑の里』というのがありま す。ここは、素人からプロまでだれでも実費を負担すれば、自分の句碑を建てることができます。七年ほど前に永六輔さんたちと行き、俳句をマイムにしてみたら、といわれたのがきっかけです。それから、(松 尾)芭蕉や(種田)山頭火の俳句をマイムにして舞台でやるようになりました」

 

※最近、小学生の俳句もマイムにしたとか。

 

B 「(同町の〕静川小学 校六年生十四人の作品をマイムにする機会がありまし たが、自然の中で育ったせいか、こどもの感性が鋭いのには驚きました。『朝霧は日の出とともに消えていく』という句を作った子がいて、実際にそこで朝起きてみたら一面が真っ白で、あとでスーッとなくなっていく。『紅葉はまるで野菜のいためもの』という句は、マイムにできませんでした」

 

※難しいものですね。

 

A 「ひねったものより、シンプルな方がマイムにはしやすいですね。手話も入れて、白なら歯、赤なら唇を指さします。視覚だけで はなく、聴覚にも訴えて、パントマイムは総合的なエンターテインメントです」

 

(附き手 生田誠)