「俺は現役のプレーヤーだからね!」

今日は時間を無理やり作って東中野に映画を見に行った。ドキュメンタリー映画「小三治」。柳家小三治師匠の生きざまを描いた映画だ。師匠とは永六輔さんを介して昔旅によく連れて行っていただいた。映画の中にちりばめられた師匠のひとこと一言が自分の頭に鉄拳のごとく振り下ろされた。その一つ一つが実践に裏付けられた重い重い意味が込められていた。そして何と言っても圧巻は何度も繰り返しておっしゃられていた「俺は現役のプレーヤーだからね!」という常に自らを追い詰め続ける芸人の姿だった。この言葉が自分には「お前は一体現役なのかい?教える資格あるのかい?」と響いてくる。確かに私のような若造に演技を教えるなどは大それたことだ。師匠のあの変わり身の早さと正確さは演技の真髄だ。理屈をこねる奴にろくな演技ができないのが多いのかもしれない。それでもやはり自分は大学で何が本物で何が偽物なのかを教えていかねばならないのかもしれない。
この映画、鰍沢という噺で終わるのだが、この噺を得意とする入船亭扇橋師匠にもずいぶんとお伴させていただき、この鰍沢は何度も聞いていたので、その味の違いに圧倒された。両方とも凄いのだ、それぞれの味で!!オリジナリティーを出すことの難しさ、これは映画の中で志の輔師匠もおっしゃられていたが、本当に芸人ってすごいと思った。テレビで見る芸人(本来ならば芸人とはいわないのだが)しか知らない若者がかわいそうだ。だからこそ、こういう本物の芸があるということをこれからの授業でどんどん若者に教えていかねばならないのだと思った。
帰りに今日は降誕会ということを思い出し、近くの寺の誕生仏に甘茶をかけてお参りしてきた。明日からはマイムの理論と歴史の授業が始まる。

2009-04-08 08:36 | つれづれなるままに | コメント(2)

学びの日々

本日よりいよいよ早稲田の新学期が始まった。今年も演劇史、演劇入門に加えて、マイムの歴史と理論を担当する。 いままでブログをかなり滞らせてしまったのが心のこりだが、本当に紆余曲折、学びの連続の春休みだった。先月いっぱいまで、関西方面に滞在した関係上、出先の図書館にて時間が許す限り博士論文の審査についやし、ついに月末までに三本の最終選考論文の批評を提出。そのまま帰京し、新学期にそなえるはずだったが、突然の悲報が入り、その足で新潟へむかった。
東京経済大学教授、異文化コミュニケーション研究者、野村啓治先生。私が尊敬し、あこがれる大先輩としてその姿を自分の将来に重ね見ていたこの方と出会ったのはウィスコンシン大学であった。私の二代前にMJA(マディソン日本の会)の会長をされ、その後帰国されて東京経済大学でご専門のコミュニケーションを指導されていらっしゃったが、たまたま私の在米中に一年間ご家族をつれられてマディソンに研究のために滞在されており、ご家族ともどもお付き合いさせていただいていた。まさに理想の教師、父親、そして家族の長であったこの方の突然の他界は本当に晴天の霹靂のごとく私を打ちのめした。そしてそのお別れの会に参列させていただき、ご友人や牧師さんのお話から察せられる、私の知る以上の野村先生のご人徳、信仰心を知り、本当に胸が張り裂ける思いだった。そして信仰心の力にも改めて思い知らされた。人間は最後まで強く,そして優しく生きられるのだと。
野村さんとの会話の中で、いつか私たちは何故か同じ趣味や同じ思いをもっていることが多く感じられた。老後の自分の理想像があまりに似ていたのにもびっくりし、大笑いしたことがある。ロッキングチェアーに揺られて、暖炉に向かい、(吸えなくても)パイプをくわえながら、白い髭を蓄えて、英文学の書を紐解きながら、孫をその膝に乗せている・・・・こんな話題に盛り上がったことがあった。
野村先生、私はあなたのような素晴らしい教師、父親、そして人間になりたい。

2009-04-06 11:18 | つれづれなるままに | コメント

論文地獄!

ここのところ月末の論文審査の締切のため、寝る時間を割いて最終選考に選ばれた三人の博士論文を読み込んでいる。ん~、一人約250~300ページの論文はそうは簡単に読み終われない(汗)締切が迫るなか、必死に一つ一つ終わらせては各審査項目の採点を行うのだが、ついにここにきて肩こり、頭痛に加えて耳鳴りがしたので、今日は耳鼻科へ行ってきたのだ(涙)。もともとメニエール症候群に苛まれたことのある身なので、念のため精密検査をしてもらったのだが、どうやらそんなに深刻なものではないそうなので、ホットした。修士論文を書いている20代半ばの時、やはりこんな不規則な生活をしていたのだが、ある朝目を覚ました瞬間に部屋中がぐるぐる回転しはじめ、そしてそのめまいにより気持ちが悪くなるという症状が続き、医者にメニエール症候群と診断された。その後しばらくは治まっていたのだが、今回の寝不足と過度の視神経の疲れからか、久しぶりの耳鳴りとめまいだった。ん~、あと五日ほどで締切だ~! しばらく英文の論文を読んでいないうちにかなり読解力が後退したような気がする。しかし、それにしても何でこんな難しい普通には使われない言い回しをしないとならないのか!!(って結構自分の博士論文も例外ではないが苦笑)
とにかく、読んで読んで読みまくる毎日なのだ~~~~~~~~ああ、私の眼はボストンの空港じゃ!(注:ローガン空港!!)
補説:カンジヤママイムは昨年のAATE(アメリカ教育演劇協会)にて最優秀論文賞を受賞したため、本年度の論文審査員を依頼され、7人の審査委員の一人として今年の最優秀博士論文賞の審査をしています。

2009-03-25 09:10 | ひとりごと | コメント